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研究班について

Triglyceride deposit Cardiomyovasculopathy,TGCV
中性脂肪蓄積心筋血管症研究班について

中性脂肪蓄積心筋血管症(Triglyceride deposit cardiomyovasculopathy, TGCV) は、2008年にわが国の心臓移植症例より見出された新規疾患単位であり、中性脂肪が心筋細胞や冠動脈血管平滑筋細胞に蓄積する結果、重症心不全、不整脈、冠動脈疾患を来す難病です*。2019年には、本症は、欧州最大の希少疾患ネットワークであるOrphanetに独立した疾患として登録されました(ORPHA Code: 565612)。 TGCVの原因遺伝子は細胞内中性脂肪分解の必須酵素Adipose triglyceride lipase (ATGL)であると考えられており、本症はATGLが遺伝的に欠損した原発性TGCVとATGL遺伝子には変異を認めない特発性TGCVに分類されます。TGCVでは心臓の本来のエネルギー源である長鎖脂肪酸が利用できず細胞内に中性脂肪として蓄積するため、エネルギー不全(energy failure)と脂肪毒性(lipotoxicity)による細胞・臓器障害が生じます。臨床的特徴は「診断の手引き第4班」にまとめられています。患者さんの多くは本症と診断されず、心不全、心筋症、狭心症などの病名で従来の内科的あるいは外科的な標準治療を受けておりますが、奏功しないケースも多く見受けられます。

2009年より厚生労働省難治性疾患克服研究事業としてTGCV研究班が立ち上がり、本症の1日も早い克服を目指して、その疾患概念の確立、診断法、治療法の開発を進めています。2015年にTGCV診断基準・診断手引き(初版)が公表されましたが、その後の研究進展に伴い、2020年にはTGCV診断基準が改訂されました。現在、国内外合わせ300件以上の診断例が報告されています。また、TGCVの症状および予後改善が期待できる治療薬として中鎖脂肪酸の一種トリカプリンを主成分とするカプセル剤CNT-01を大阪大学医学部附属病院にてアカデミア創薬しています。TGCVモデル動物による非臨床proof of concept (POC) を得たあと、これまで健常人対象の第I相試験、特発性TGCVを対象とする第I/IIa相試験、特発性TGCV患者を対象とする多施設共同プラセボ対照二重盲検ランダム化比較の第IIa相試験を行ってきました。さらには、海外の患者・研究者からの要請に応えるため国際臨床研究も実施するなど1日も早い本症の克服をめざしています。 本研究班はThe Japan TGCV study groupとして世界規模の国際レジストリーの構築を進めており、国内外からの情報をさらに収集する予定です。 *Hirano K, et al. N EnglJ Med. 2008